「分捕り物」という言葉
「分捕り物」とか「分捕り品」とかいう言葉がある。人によっては桃太郎の歌など連想するそうだが、旧約関係でよく出てくる言葉でもある。
たとえば、サムエル記上30:20b
וַיֹּ֣אמְר֔וּ זֶ֖ה שְׁלַ֥ל דָּוִֽד
〈私訳〉彼らは、「これがダビデの分捕り物だ」と言った。
ところで、「分捕り物」の「ぶん」とは何なのか?「メールをぶん投げる」とか言うときの「ぶん」なのだろうか?と、Twitterでつぶやいたところ、友人から以下のリンクが送られてきた。
https://katsujuku8317061.ti-da.net/e2502211.html
無関係なブルース・リーの写真なんかあるし、ちょっと怪しいなーと思ったので、改めて調べてみたら、広辞苑に以下のような記載があった。
ぶち【打ち】
〔接頭〕
動詞に冠して強意・強勢を表す。時に促音化して「ぶっ」、撥音化して「ぶん」となる。「ぶちこわす」「ぶったおれる」「ぶんなげる」など。
つまり広辞苑によれば、「ぶんどる」が「捕る」の強意であるとしたら、「打ん捕る」が逐語的には正しいわけである。
だが、同じ広辞苑では「分-捕る」と表記されている。そして「分」の項目を見ると意味の二つ目のところに「わりあて、わけ前」と書かれているのである。「分捕り物」というのは、戦利品の意味であって、敵を打ち倒すことで所有権の取得が認められた物のことを指す。すなわち、ここでは「分」の字は「分捕り物」の意味を構成している。
逐語的表記が意味解釈に先行するとすれば、ここで起きているのは次のようなことだ。
すなわち、初めは逐語的に「打ん捕る」と表記されていた言葉が、次第に定着するにつれて表記自体のなかに意味的な根拠を求めることになり、いわばアレゴリー的に「分捕る」という表記が生まれたことになる。
だから結局のところ、上記リンクはだいたい正しかったわけだ。おもしろい!
ちゃんと先行研究など調べたわけではないので、もう誰かが言ってそうなものではあるが。